ある高原のホテルに宿泊した時のことだ。夜の食事場所に行くと、まず驚いたことに、全ての料理がテーブルの上に並べられていた。温かい料理は通常その都度運ばれてくるものだが、天ぷらや椀物も冷えている。しばらくすると、女性がテーブルの横に立った。年齢は二十歳そこそこか。名札を見ると研修生とあり、明らかに中国の人の名前。「中国の人?」と尋ねる。「ハイそうです」とイントネーションが違う。食事の説明をするが、たどたどしい。多分私の方が詳しいと思うくらいだ。おもむろにチャッカマンを出し、鍋物に火をつけようとするが、ロックが掛かっているのか、火が付かない。貸してご覧と言って、ロックを外して事なきを得る。この間先輩の仲居さんは一度としてこない。まあ後で謝罪にはきたが。その後もたどたどしい物腰が続くが、我らは高齢なので優しく対応し、帰り際には「頑張りなさい」とエールを送ってきた。それにしても、研修生ならベテランが付くとか、もっと教育してからでないと、サービス業失格といわれても弁解の余地はない。
私たちの住む日本でも、人手不足はかなり深刻なところまできてしまったようだ。