15年ほど前のことだと記憶するが、得意先の担当者から連絡があり、納品した印刷物がこれまでの色と違うとの指摘。原因は単純で、印刷用紙の違いにあった。前回まではコート紙で印刷したが、今回は上質紙の指定と言うことで、事前に色が変化することは説明したが、蛍光色に近い緑色は予想以上の違いを見せた。
もう一例は18年ほど前になるが、4色カラーのパンフレットの印刷で、原稿となったインクジェットの出力紙を見て、オレンジの蛍光色の部分は、事前に、鮮やかさはなくなることは伝えた。ところが色の低下は予想を超え、マゼンダに蛍光インキを加え刷り直した経験がある。
印刷用紙の違いによるインキの色の変化は、蛍光色ばかりでなく全ての色に言える。厳密に言えば、コート系・上質系・再生紙系・特殊紙系それぞれで色は違ってくる。この現象は、印刷用紙の紙質や色の違いで、用紙に反射して、人間の目に見える光の色の違いにあることと、印刷用紙の平滑度によっても差がでる。コート紙のような塗工紙は平滑度が高く、インキの紙へのにじみが少なく鮮やかに見えるが、上質・再生紙のような非塗工紙は、インキのにじみが多く、濃く見えることによる。
蛍光色の教訓は、インクジェットの特性である中間色が、より鮮やかに出力することへの認識の不足にある。あれから20年の印刷業界は、色校正の分野でも、デジタルコンセンサスや、プルーファーの簡易校正機の発展と共に、カラーマジメント技術の成長で、大変革をもたらすこととなった。