昭和40年代までは全盛だった活版印刷が、50年代から衰退の一途を辿った。みやざき印刷も昭和56年にはオフセット印刷へと転換。その後オフセット印刷は現在のデジタル化へと発展し、目覚ましい成長を遂げた。その陰で活版印刷は潰えたかに見えたが、急速なデジタル化が活版印刷を蘇らせた。
昨年末、当社が和紙用紙での印刷などを依頼していた活版印刷屋さんが廃業。様々な繋がりで活版印刷屋さんを探したが、そのほとんどが廃業に近い状況だった。何軒目かで、同じ世田谷の露木印刷さんを紹介され、すがる思いで連絡すると心よく快諾。早速伺うと、昔懐かしいインキや機械油が入り混じった独特の臭い、予想もしなかった大きな機械と、名刺やカードを印刷する機械など、三台が所狭しと並んでいる。年齢は私と変わらない気さくなご主人と、元気で良く気が付く奥さんという、昭和の時代を醸し出す印刷屋さんだった。
口コミで伝わるらしく、遠方からも依頼があるという。訪ねた時は厚紙の表紙に刷り込みの印刷をしていた。昔懐かしい機械音などを聞きながら、奥さんから頂いたお茶を飲み一時間、後ろ髪を引かれる思いで露木印刷を後にした。後継者がいないというが、末長く継続してもらいたい。