那須に渓流釣りに行った時のことだ、相棒が「ペニーレインて知ってるかい」と尋ねる。鼻歌も交えビートルズの曲だろうと返す。すると、さも自慢げに「え、知らないの、有名なパン屋で誰でも知ってるよ」とほざく。「寄ってみるかい」ときた。「パン屋には興味が無いが、コーヒーでも飲むか」と応じる。幹線道路を外れ、別荘が点在する雑木林の道へ。すると、そこだけが異空間を思わせる建物が出現する。車が所狭しと駐車し、さながら雑木林のなかの、夢の国と言ったところか。若者やカップルで埋め尽くされた店内に、おじさん二人何とも場違いだ。それでも、おじさんはこんな事では動じない。パンを買い、コーヒーを注文し、ピートルズの曲が流れるオープンカフェへ。一見して別荘の住人とおぼしき、犬を連れた若い夫婦が、モーニングを優雅に楽しんでいる。ビートルズに酔いしれながらのコーヒータイムは、至極の時間だった。