今回ほど短いと感じ、そして感動が連続したオリンピックは初めてだ。また選手の涙の奥深さはオリンピック特有のでもあった。勝者の涙は明るく晴れやかでキラキラ輝いているが、敗者のそれは、何年もかけ築き上げた努力が、重く溶け込んでいる。負けるべく負けた訳ではなく、4年に一度の大会で勝利者になるのは、その時の体調・精神状態や運も含め大きく作用する。卓球の愛ちゃんは、あとワンポイントでメダルに届かなかった。世界4位は凄いが、愛ちゃんには満足が行く結果ではなかった。団体戦の戦いでは、そのことを引きずっているようにも見えた。苦しみながらも3人で勝ち取った銅メダルは、嬉しさより自らの不甲斐なさを攻める涙が愛ちゃんらしかった。銀メダルの吉田沙保里は、よもやの敗戦を受け入れる事が出来ず、マットに顏をうずめ涙した。流した涙は他のどの選手より多く、その涙に濡れた銀メダルはどの金メダルより一層の輝きを放っていた。
メダルの色は誰のための色なのか、ふとそんな疑問が頭をよぎる。オリンピックの宿命なのか、国を代表する個人がオリンピックの精神だが、国を背負う選手の色合いが強い。
どんな色のメダルでも表彰台では勝者敗者なく、お互いを称え合うようになるには、国を背負うのではなく、選手個人の競争との精神が根づくことが望ましいように感じる。